ポプラ
萌から銀杏並木はへ黄一色 ブルーが空へ溶け出したのだ
赤門の銀杏並木の燃ゆる頃北のポプラは枯れ木になりぬ
赤門の銀杏並木が燃える頃吾踏みしめるポプラの落ち葉
季節は冬へ
木枯らしに背中を押され駆け込んだ汗の吹き出す車内の常夏
日曜の朝手回しで珈琲を挽いていた爪はながくて四角
探し物
ああここに忘れた頃にひょっこりと馴染んだ指輪バッグの底に
傷まみれ通勤鞄が遺されし父去る実家の居間にポツンと
咳
明け方に乾いた咳で目が覚める明星と白湯に心を委ね
この活字あの装丁も好きだった本を捨てるは心も捨てる
微かな
気配ほどされど確かにそこにあるオーケストラのチャイム一音
今日もまた玄関チャイムも鳴らなくて独りとなった母の訴え