ウタ日記

浮遊することばと追いかけっこ

ポプラ

萌から銀杏並木はへ黄一色 ブルーが空へ溶け出したのだ 赤門の銀杏並木の燃ゆる頃北のポプラは枯れ木になりぬ 赤門の銀杏並木が燃える頃吾踏みしめるポプラの落ち葉

果てしない夢は努力に花開くトゥーランドットを舞う氷上に 果てしない夢は努力の上に咲くトゥーランドットを舞う氷上に 宵の月花はうららか隅田川水辺に遊ぶ思い思いに

季節は冬へ

木枯らしに背中を押され駆け込んだ汗の吹き出す車内の常夏 日曜の朝手回しで珈琲を挽いていた爪はながくて四角

探し物

ああここに忘れた頃にひょっこりと馴染んだ指輪バッグの底に 傷まみれ通勤鞄が遺されし父去る実家の居間にポツンと

ミドリとしろ

霧の中茶の花の白は慎ましく新茶の青の力強さよ 葉に埋もれうつむきかげん白い花茶にも花有りつぶらな実もなる

明け方に乾いた咳で目が覚める明星と白湯に心を委ね この活字あの装丁も好きだった本を捨てるは心も捨てる

微かな

気配ほどされど確かにそこにあるオーケストラのチャイム一音 今日もまた玄関チャイムも鳴らなくて独りとなった母の訴え

France

色彩の溢れ流るる音並び海の煌めき拾うドビッシー 足下はゴツゴツキャリーがらがらと軋む石畳プロヴァンスの径

相聞歌

大切と言って貰える歓びは薄曇り晴れる満月のごと 満月の欠けたることの必然に満ちゆく想い怖さ溢るる

引き出しの奥の奥の奥

折れ曲り近藤恭子が5、6枚辞表をたたきつけた会社の 糸くずとともにポツンと貝ボタンお気に入りシャツはもうそこに無く

初雪

雪の降る前の匂いに満ちる夜早足で追う薄き三日月 1初雪の日君と飾りしモミの木もクリスマスにはただ白くあり 2南国の人は白いと思う雪北国の吾碧く見えたり 3夜ふけて重低音は153億円のパウダースノー 4キラキラと吐く息踊る氷点下沈黙の幕は我らを覆う 5空…

二筋のパラレル線を描きおり花筏を往くつがいの水鳥 <推敲> パラレルの線を水面に描きおり花筏を往く番の水鳥 <講評>花筏、は歌にするのは難しいNGワード、情緒の味が濃すぎる、が「パラレル」という情緒豊かな短歌用語ではない言葉を選んだことが功を奏…

紅い実

雪道に落ちて潰れし紅い実は涙ポロポロ散りばめられて 啄むは雪に覆われ冷たかろ硬くて渋いナナカマドの実 此処に咲く一輪のみの沈丁花口をついて出る早春賦の唄 ひらひらと雪の舞う中咲く気概沈丁花の香満ちるは間も無く

パリパリ、ポリポリ

漬物のない白飯は耐えられぬ我が家のオトコ口を揃えて 三年目やっと我が家の味となり手を抜けば駄々をこねる糠床 浅漬けに曲がり胡瓜がよく似合う母の畑は今年も元気 曲がったり太すぎたりする胡瓜たち吾ピクルスに君浅漬けに 浅漬けに曲がり胡瓜がよく似合…

父の病

眠る父からのプレゼント水色の誕生石乗せる薬指 薬指誕生祝い想い出の水色の石に父の手重ね 初雪は肌の上にて水となり凍れる落ち葉滴る涙 初雪は肌の上にて水となり指先伝い涙 となりて

昼メシ

チャイム鳴り昼飯時は訪れるエラー音鳴り響くラインにも初めてのビジネスランチは小声にて待ちかねるランチ否これは昼ごはん弁当箱の塗りの曲げわっぱ

桜の都

米粒は白生活を覆う白背筋を伸ばすシャツの色は白 薄紅は白より淡く匂いをり散る花びらは儚くなりて 旅土産手渡せぬままの約束はひと月先の葵祭に ずしを抜けろおじに迷い込む正午太陽のおいでおいでする闇 君も桜ソメイヨシノにあらずんば桜にあらずとどこ…

小さいヒト

狭い歩道ビルの谷間に響く声小さなひとたち我先に駆け 少子化の時代の宝保育士も子供と共に社会を写す

生き死ぬ

朝焼けが琵琶湖に浮かぶ水鏡迫り来る野火生き死にを見ゆ 熊野路に一歩踏み込みするすると吾溶けゆきて影さえもなく

祭り

鉢巻は揃いのねじり鳶の衆水打つ観衆得意は木遣り 足下に手拭い一本落ちており神輿の後れ毛ほつれたように

ヨソラに飛ばせ届かぬおもひ

瑠璃色の空さえざえと震えおりアンテナにひっかかる二日月 水面に一滴の波紋ひろがるを吾も歌いたしアンテナの先

卵とミルク、そしてバニラ

春浅き夜唐突にカスタードプリンの香り脳内に湧き

夕餉前

レシートを一枚毎に丸めつつ転がす吐息夕餉の匂い ソプラノの声は出ずとも甲高く話す彼女のスカートふわり 珈琲を前に溢るることのはにジャズの不定形リズムのゆらぎ 米粒の色生活の色それは白身体を紡ぐケミカルも白 朝の日の力を両手に受取りし夕餉前には…

晩春

紅牡丹陽射し眩しと葉に隠れ今や遅しと土に還らん 指先にちさき米粒二つ三つ今朝の青空飛ぶ千切れ雲

芽吹き

並木道芽吹きの枝は蒼くなり歩く歩幅を少し大きく桜花儚くなりて芽吹く木々色も緑のみにもあらず今日も駆け込む地下鉄汗ばみぬ芽吹きの黄緑蒼さを増して今朝焼けたクロワッサンのサクサクと芽吹きの黄色、今日がはじまる

背中

ターコイズ色のシャツにて家を出る背丸める君ひとり残して 去年はグレー今年は白が流行るらし烟れるマチを透明にせよ

祈りは

問題はそこではなくて此処なのです松林図屏風に末魔の声聞く 今日のこと明日やるべきこと並べては入れ替え続け夜更けのカルヴァドス 頷けば右目にかかる前髪の鬱陶しくも愛おしくあり 診察室より呼ばれし老女に「頑張って」声で背を押す、娘だろうか ぐるり…

卒業

此処かしこ枝にたわわな寒椿半ズボンの膝小僧駆けてくる 花びらの滴る血赤山茶花よ空より射られ側溝染むる 桜花何回卒業しただろう心躍らせ振り切っただろう 紅を引くような未練を抱きつつ薄桃グロス塗りて卒業 無防備な横顔君を忘れまじ「またね」言いそび…

苦々しく

珈琲の舌に苦みは際立ちて羽織る白シャツ今朝は重たし 羽織るシャツ白きが今朝は重たくて珈琲の苦み舌にざらりと 今朝のことツグミが一羽飛び立ったシャツの真白きひんやり滑る

学問

新学期大きな銀杏に寄りかかり木漏れ日浴びし講義の合間クラス一洒落た彼女は講義中万年筆にてノート取りをり騒がしく講義は続く数学の黙ししままに板書も続く