ウタ日記

浮遊することばと追いかけっこ

明け方に乾いた咳で目が覚める明星と白湯に心を委ね

 

この活字あの装丁も好きだった本を捨てるは心も捨てる

 

 

微かな

気配ほどされど確かにそこにあるオーケストラのチャイム一音

 

今日もまた玄関チャイムも鳴らなくて独りとなった母の訴え

 

France

色彩の溢れ流るる音並び海の煌めき拾うドビッシー

 

足下はゴツゴツキャリーがらがらと軋む石畳プロヴァンスの径

 

 

相聞歌

大切と言って貰える歓びは薄曇り晴れる満月のごと

満月の欠けたることの必然に満ちゆく想い怖さ溢るる

引き出しの奥の奥の奥

折れ曲り近藤恭子が5、6枚辞表をたたきつけた会社の

 

糸くずとともにポツンと貝ボタンお気に入りシャツはもうそこに無く

初雪

雪の降る前の匂いに満ちる夜早足で追う薄き三日月

 

1初雪の日君と飾りしモミの木もクリスマスにはただ白くあり

 

2南国の人は白いと思う雪北国の吾碧く見えたり

 

3夜ふけて重低音は153億円のパウダースノー

 

4キラキラと吐く息踊る氷点下沈黙の幕は我らを覆う

 

5空気ひりり刺さる頬に手を当てる夜半には雪にと予報をぽつり

 

6盛り上がる白き地面に突き刺さり氷柱は透けて冬春の際

 

7マフラーをぐるぐる巻いて駆け出す日初雪ならぬ雪虫あまた

 

8ポケットに突っ込んだ指じんじんとすぐにほどけた雪投げの玉

 

9新雪にヒールの高い靴を履き道なき道をザックザックと

 

10横顔の君の睫毛に留まる雪唯一無二は結晶のかたち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二筋のパラレル線を描きおり花筏を往くつがいの水鳥

 

<推敲>

パラレルの線を水面に描きおり花筏を往く番の水鳥

 

<講評>花筏、は歌にするのは難しいNGワード、情緒の味が濃すぎる、が「パラレル」という情緒豊かな短歌用語ではない言葉を選んだことが功を奏した。