ウタ日記

浮遊することばと追いかけっこ

2016-01-01から1年間の記事一覧

パリパリ、ポリポリ

漬物のない白飯は耐えられぬ我が家のオトコ口を揃えて 三年目やっと我が家の味となり手を抜けば駄々をこねる糠床 浅漬けに曲がり胡瓜がよく似合う母の畑は今年も元気 曲がったり太すぎたりする胡瓜たち吾ピクルスに君浅漬けに 浅漬けに曲がり胡瓜がよく似合…

父の病

眠る父からのプレゼント水色の誕生石乗せる薬指 薬指誕生祝い想い出の水色の石に父の手重ね 初雪は肌の上にて水となり凍れる落ち葉滴る涙 初雪は肌の上にて水となり指先伝い涙 となりて

昼メシ

チャイム鳴り昼飯時は訪れるエラー音鳴り響くラインにも初めてのビジネスランチは小声にて待ちかねるランチ否これは昼ごはん弁当箱の塗りの曲げわっぱ

桜の都

米粒は白生活を覆う白背筋を伸ばすシャツの色は白 薄紅は白より淡く匂いをり散る花びらは儚くなりて 旅土産手渡せぬままの約束はひと月先の葵祭に ずしを抜けろおじに迷い込む正午太陽のおいでおいでする闇 君も桜ソメイヨシノにあらずんば桜にあらずとどこ…

小さいヒト

狭い歩道ビルの谷間に響く声小さなひとたち我先に駆け 少子化の時代の宝保育士も子供と共に社会を写す

生き死ぬ

朝焼けが琵琶湖に浮かぶ水鏡迫り来る野火生き死にを見ゆ 熊野路に一歩踏み込みするすると吾溶けゆきて影さえもなく

祭り

鉢巻は揃いのねじり鳶の衆水打つ観衆得意は木遣り 足下に手拭い一本落ちており神輿の後れ毛ほつれたように

ヨソラに飛ばせ届かぬおもひ

瑠璃色の空さえざえと震えおりアンテナにひっかかる二日月 水面に一滴の波紋ひろがるを吾も歌いたしアンテナの先

卵とミルク、そしてバニラ

春浅き夜唐突にカスタードプリンの香り脳内に湧き

夕餉前

レシートを一枚毎に丸めつつ転がす吐息夕餉の匂い ソプラノの声は出ずとも甲高く話す彼女のスカートふわり 珈琲を前に溢るることのはにジャズの不定形リズムのゆらぎ 米粒の色生活の色それは白身体を紡ぐケミカルも白 朝の日の力を両手に受取りし夕餉前には…

晩春

紅牡丹陽射し眩しと葉に隠れ今や遅しと土に還らん 指先にちさき米粒二つ三つ今朝の青空飛ぶ千切れ雲

芽吹き

並木道芽吹きの枝は蒼くなり歩く歩幅を少し大きく桜花儚くなりて芽吹く木々色も緑のみにもあらず今日も駆け込む地下鉄汗ばみぬ芽吹きの黄緑蒼さを増して今朝焼けたクロワッサンのサクサクと芽吹きの黄色、今日がはじまる

背中

ターコイズ色のシャツにて家を出る背丸める君ひとり残して 去年はグレー今年は白が流行るらし烟れるマチを透明にせよ

祈りは

問題はそこではなくて此処なのです松林図屏風に末魔の声聞く 今日のこと明日やるべきこと並べては入れ替え続け夜更けのカルヴァドス 頷けば右目にかかる前髪の鬱陶しくも愛おしくあり 診察室より呼ばれし老女に「頑張って」声で背を押す、娘だろうか ぐるり…

卒業

此処かしこ枝にたわわな寒椿半ズボンの膝小僧駆けてくる 花びらの滴る血赤山茶花よ空より射られ側溝染むる 桜花何回卒業しただろう心躍らせ振り切っただろう 紅を引くような未練を抱きつつ薄桃グロス塗りて卒業 無防備な横顔君を忘れまじ「またね」言いそび…